Zero・Crisis
イントロダクション


メインバーニアが火を吹いた。
このシャトルはもう保たない。

シニアス: 「・・・・・はぁ」

俺はコンソールパネルの表示を見て、思わず溜め息を一つついた。
パネル上にある、ありとあらゆる警告は全てRED。
『DANGER』の文字を点滅させている。
そのうえ、シャトルの視界は大気圏突入の為、真っ赤に染まっていた。

シニアス:「コックピットの中も外も真っ赤。まったく、結構な事だな」

要するにこの船はもう、手がつけられない程どうしようもない状況にあるって事だ。
その証拠にこのシャトルは、惑星の重力に引かれ加速度をつけて地表に向かってまっしぐら。

シニアス: 「まいったね・・・こりゃ・・・・・」

俺はまるで他人事のように呟く。
他の奴なら何とかしようと必死になるところだが、俺にとってこんな事は、日常茶飯事の事。
いちいち慌ててもいられない。

俺の名はシニアス・レーイ。
宇宙の探偵、スペース・ディティクイティブを生業にしている男だ。
仕事柄、色々な修羅場を何度もくぐり抜けてきている。
死線を彷徨った事など、一度や二度の事ではない。

シニアス: 「でも・・・・今回はとびっきりヤバイんじゃない」

そう。
このまま地表に衝突すれば、この船どころか俺の命もない。
だからと言って何ができるかと言えば、実際問題俺にできる事は、ただ神様に祈るぐらいしかなかった。

シニアス: 「減速用のエンジンもパー。姿勢制御装置もおシャカ」

シニアス:「メインブースターは随分前から沈黙してるし・・・操縦桿は飾り物に成り下がっているし・・・・・」

シニアス:「・・・・・もうどうにもならんな」

俺は本当に全てを神様に任せると、コックピットのシートを少し倒し、ポケットからタバコを出して火を着ける。
俺は死を覚悟した時は、必ず一服することにしている。
なにしろ死んだ後では一服できない。

シニアス: 「ふぅぅ・・・・・」

俺は肺いっぱいに吸い込んだ煙を一気に吹き出す。
真っ赤に染まったコックピットに白い煙が漂った。
その煙をぼんやり眺めながら、ため息混じりの独り言を、俺は思わず口にする。

シニアス: 「そもそも・・・依頼を受けた時からイヤな予感はしてたんだよな」

俺は事務所に現れた、血塗れの男の顔を思い出した。
その男が、死に際に俺に渡してきたのが一枚のデータディスクと自分のマネーカード。
それに住所の書かれた一枚のメモ。

「これをここに・・・報酬はこれで・・・・・」

そう言い残して、男は勝手に息を引き取った。
依頼を受けるなど一言も言わなかったから、別にしらばっくれちまっても良かったんだが、男の残したマネーカードの残高に、俺の良心が動いてしまった。
さすがに船が一隻買える金額を渡されると、届け物ぐらいしてやってもいいかな。という気にもなる。

シニアス: 「その結果がシャトル一隻と俺の命か・・・割に合わないな」

思わず呟いた時に、今まで真っ赤に染まっていたシャトルの視界が不意に広がった。
それは今までと一転した、一面の青い世界・・・・・。
それに続いて強烈な衝撃がコックピットを襲い、俺は意識を失った。

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