一片の光も射さない、暗くジメジメとした地下牢。
その地下牢には、似つかわしくない女性が捕らえられていた。
清楚な顔立ち。美しいプラチナのような長い髪。宝石がちりばめられた純白のドレス。
どれをとっても、こんな地下牢にいるような容姿ではない。
この姿が似合う場所と言えば、大きな城の大広間の一番奥の席だろう。
現に彼女は、そういう場所についさっきまで居た。
彼女の名は「ティアラ」。由緒正しきセルティア王国のお姫様である。
いや・・・お姫様であった。と言った方が正確だろうか。
ティアラの住んでいた城も、父も、母も、国さえも、今はすでに存在していない。軍事大国であるグヴィア帝国の強襲を受け、全滅させられたのだ。
唯一の生き残りであるティアラは、宝物と同じように戦利品として捕らえられ、この地下牢に繋がれてしまったのである。
ティアラ:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ティアラの両手両足には枷が付けられ、鎖で煉瓦の壁にX字に繋がれていた。身動きをする事もままならない。
ティアラ:(私・・・どうなってしまうの?)
言いようのない不安が、ティアラの胸にはこみ上げていた。
敵国に捕まった者がどうなるか。色々な想像が脳裏を駆け抜ける。
いっそ父や母の後を追い、自分で自分の命を絶とうかとまで考えたティアラだが、それを実行する事はできなかった。
父と母が亡き今、セルティア王国を復興させる事ができるのはティアラだけ。生きていれば、そのチャンスがあるかもしれない。
セルティア王国の最後の生き残りとしては、今は囚われの身であっても、最後の最後まで諦める訳にはいかなかった。
それに自分で自分の命を絶つという行為は、ティアラが信仰する宗教では最大の罪となる。
そう考えるとティアラは、囚われの身という今の立場を受け入れなければならなかった。
ティアラ:(今は囚われの身でも、いつか・・・きっと・・・)
ぎぃぃぃぃ・・・・・・・・
ティアラが自分自身を勇気づける為の言葉を心の中で呟いた時に、地下牢の扉が重く不気味な音を立てて開けられる。
暗い地下牢に一筋の明かりが射し込み、ティアラの姿を浮かび上がらせた。
ゲルフ:「ご機嫌はいかがですか?ティアラ姫」
ティアラ:「あっ・・・あなたは・・・・・」
開け放たれた扉から入ってきたのは、黒いローブに身を包んだ男である。
逆光で顔はハッキリとしないが、そのしわがれた声から醜悪な表情をティアラは十分に想像できた。
どう考えてもティアラを助けに来てくれた者ではない。
ティアラ:「あなたは誰ですか!私をこんな所に閉じこめて、一体何を企んでいるのです!」
ゲルフ:「囚われの身とは言え、さすがセルティア王国の姫君ですな。その気丈な態度、感服致します」
ティアラ: 「・・・・・・・・・・」
ゲルフ: 「私はゲルフ。このグヴィア帝国の魔導師です」
ティアラ: 「魔導師・・・ゲルフ・・・・・」
ゲルフ: 「左様です。それとも漆黒の魔導師と言った方が、姫にはわかりやすいですかな」
ティアラ: 「!?」
漆黒の魔導師。その名は畏怖と嫌悪の対象として用いられていた名。
その名を聞いた瞬間に、ティアラの顔面は蒼白になった。
ティアラ: (この男が・・・漆黒の魔導師・・・・・・・・)
ゲルフ: 「おや?・・・急に顔色が変わりましたな。どうかいたしましたか?姫」
ティアラ: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
漆黒の魔導師と言えば、太古に封印された外法を操り、破壊と殺戮をもたらすと言われている。
他にも妖しい呪法を用いて清楚な女性を淫乱な雌奴隷へと変貌させる等の噂も流れていた。
ティアラの身体に自然と緊張が走り、同時に恐怖心が心臓を鷲掴みにして、今にも押し潰しそうになる。
ティアラ: 「わっ、私をどうするつもりです!」
押し寄せる恐怖心を振り払うように、ティアラは強い口調で叫んだ。
だが漆黒の魔導師は、ティアラの心を見透かしてるかのように、気味の悪い薄ら笑いを浮かべる。
ゲルフ: 「そうですねぇ・・・まずは・・・・・」
そこまで言ったゲルフの口から、意味不明の呟きが漏れ始めた。どうやら何かの呪文を詠唱しているらしい。
その不気味な声と呪文は、ティアラの心に言いしれぬ不安を、どんどんつのらせていく。
ティアラ: 「なっ、なに?!・・・なにをする気なの?!」
ゲルフ: 「・・・・・・・・・ふっふっふっ。すぐにわかりますよ」
そう言って呪文を唱え終えたゲルフが右手を振り上げると、ティアラの身体に異変が起きた。
ティアラ: 「なっ・・・なにっ?・・・いやっ!・・・・・」
まるで見えざる手がティアラのドレスを掴み、引き裂かんばかりの勢いで引っぱり出したように、衣服が彼女の身体から離れようとする。
ティアラ: 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ビリビリビリビリビリッ!!
限界を超えた布は音を立てて破れ、ティアラの白く美しい肌を、ゲルフの前に晒した。
ゲルフ: 「ふっふっふっ・・・想像通りの美しい肌ですな」
ティアラ: 「あっ・・・ああぁぁぁっ・・・・・」
ゲルフ: 「さてと・・・・・・・・」
気味の悪い笑みを浮かべたゲルフは、一糸纏わぬティアラへと、にじり寄るように近づく。
恐怖心と羞恥心がティアラに悲鳴のような言葉を思わず叫ばせた。
ティアラ:「ちっ、近づかないで!汚らわしい!」
だが、そんな言葉程度でゲルフの歩みが止まることはなく、ついにはティアラの美しい顔を覗き込める距離まで近づく。
ゲルフ:「まずは何をして楽しみましょうか?・・・ティアラ姫」
ティアラ:「あっ・・ああっ・・・いっ、いやっ・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」