女捜査官・明日香 第1話



女捜査官「飛島明日香」は、かねてから追っていた男「陣内秀行」を尾行していた。

明日香: (陣内秀行・・・ドラッグと女性奴隷売買の容疑者・・・・・うまく取引現場を押さえられれば・・・・・)

陣内は特殊捜査課のブラックリストに載る人物だが、今までに何ら物的な証拠を残していない。
状況証拠だけでは逮捕は無理。だからこそ明日香は陣内を尾行して、取引現場を押さえようとしているのだ。

陣内: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

幸いにして陣内は、まだ明日香の存在に気が付いていない。
明日香は陣内に気づかれないよう、細心の注意を払って後を追っていった。
しばらくすると陣内は港の方へと足を進める。

明日香: (この先は埠頭・・・・・海外の船の船員相手とでも取り引きをするつもり?)

陣内: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

陣内は港に入ると埠頭まで行き、おもむろにタバコを取り出し火を付けた。
すると陣内の方へと人影が近づいてくる。

明日香: (いよいよ・・・取り引きかしら?)

明日香は陣内に気づかれぬように、物陰に隠れながら近づいた。

男: 「・・・・・・・・ブツは?」

陣内: 「ここにある。ニュードラッグの「ヘブン」。これを使えばどんな女でも・・・・・・」

男: 「ふっふっふっ・・・・・それは楽しみだな」

男はそう言って札束を陣内に差し出す。陣内はそれと引き替えるようにビニール袋に入った粉末を男へと差し出した。

明日香: (今、確かにニュードラッグって言ったわよね。応援を呼んでる暇はないわ。この現場を押さえなくちゃ陣内を捕まえる事はできない・・・・・。どうやら陣内独りだけだし・・・・私が捕まえてみせる!)

そう考えた明日香は、一気に陣内の後ろへと駆け寄ると、懐にあるホルスターへと手を入れる。
指先に触れた44口径S&WM66の冷ややかな感触に気持ちが一気に引き締まった。

明日香: 「・・・・・そこまでよ!陣内」

明日香は素早く銃を抜くと、陣内の後頭部に突きつける。

陣内: 「なに!?」
男: 「うわぁぁぁぁっ!!」

取り引き相手はその隙に現場から走り去るが、明日香の眼中にあるのは取り引き相手ではなく陣内ただ一人。
取り引き相手が逃げ去る後ろ姿に目をくれる事もなく、目の前の男を凝視している。

陣内: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

だが陣内は動揺した様子もなく動きを止めた。

明日香: 「陣内秀行。薬物の不法所持の容疑で逮捕するわ」

陣内: 「ほぉ・・・・・どこの組織のヒットマンかと思えば特捜か。しかも女性とは・・・・・意外だな」

明日香: 「ふーん・・・随分と余裕があるわね」

陣内: 「ジタバタしても始まらないだろ。特捜には犯人を独断で射殺する権利があるんだからな」

明日香: 「その通りよ。私達特殊捜査官は犯罪を未然に防ぐ為には如何なる非合法的な事も許される」

陣内: 「非合法的な事なら、俺の方が専売特許だがね」

そう言ってニヤリと陣内が笑った瞬間、車のヘッドライトが明日香の視界を白く染めた。

明日香: (なに!?・・・仲間がいた!?)

明日香の心に動揺が広がる。今まで一人で行動していた陣内が、まさか取引現場に仲間を配置していたとは思ってもいなかった事だったのだ。
だが、その一瞬の動揺が明日香の命取りになる。
陣内の蹴りが明日香の銃を持つ手を襲ったのだ。

明日香: 「しっ!しまったっ!!」

明日香の手の中から銃が転がり落ちると同時に、陣内が明日香の後ろに回り込み、こめかみに銃を突きつける。
陣内: 「ふっふっふっ・・・どうやら形勢逆転のようだな」

明日香: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

こめかみに突きつけられた銃の冷たさに、明日香は身動きができなくなった。

陣内: 「両手を頭の後ろに回して、ゆっくりと立って貰おうか」

明日香: 「わかったわ・・・・・・・・」

明日香は陣内の指示に素直に従う。
状況が悪い時は犯人に逆らわない。これは特殊捜査官の基本である。
命があれば状況を好転させる事も可能だが、死んでしまってはそれで終わりだ。

陣内: 「ほぉ・・・なかなか素直だな」

明日香: 「まあね・・・・・死ぬのは怖いもの」

陣内: 「ふふふっ・・・・なかなか肝も据わっているな。お前のような女、好きだぜ」

明日香: 「それは・・・どうも」
陣内: 「さてと・・・一緒に来て貰おうか。女捜査官さん」

明日香: 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

明日香は陣内に銃で押されるまま車へと乗せられた。

明日香: 「私を・・・・・どうするつもり?身代金を要求しても、一円も出ないわよ」

陣内: 「ふふっ・・・そんな事はしないさ。何をするかは、後のお楽しみだ。それまでキミにはゆっくりと眠っていてもらうとするか」

そう言った陣内が、いきなり明日香の口と鼻をハンカチで塞ぐ。

明日香: (こ・・・これは?!・・・ク、クロロフォル・・・ム・・・)

明日香はハンカチから匂う薬品の匂いを感じてハッとしたが、すぐに意識が混濁して車のシートに倒れ込んでしまう。

陣内: 「ふっふっふっ・・・・・なかなか面白い獲物が手に入った。・・・・・よし、出せ」

陣内の言葉を受けて車が走り出す。こうして明日香は、陣内の手に落ちてしまった。

TO BE CONTINUE




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