「もう痺れ薬が回り始めたかな...? 観念いたせ!」
相手の動きが止まったとみるや、幻老斎は露骨に老人特有の粘りつくような視線を這わせ、性欲の対象として速女を値踏みしていく。
戦えないくノ一なんぞ、ただの小娘にすぎん。
「あらためて見てみると、このまま殺すには惜しい器量よのう。まあ、その前にたっぷりといい思いをさせてやろう。腰が抜けるくらいにな」
卑猥な表情を剥き出しにして幻老斎はジリジリと迫り始める。
こんな凛とした美少女を徹底的に色責めに掛けたらどうなるのだろうか?
こんな女でも自分から腰を振りたてて快楽を貪欲にむさぼろうとするであろうか?
知りたい、試したい、確かめてみたい...なかなか気性の激しそうな女子じゃからな....里の誇りにかけても耐えきろうとするだろうが、その時は更に上をいく責め苦を与えるまでじゃ。
時間は無限にあるからのぉ。じっくり蕩かせてやるわい。
こんな乙にすました美女がドロドロに蕩け切ってあえぐ様はいったいどれほど恍惚とした眺めだろう。
わしは一目それを見たいのじゃ。
待っておれ...もうすぐじゃ、もうすぐ...
幻老斎がフラフラ近づいていくと、今まで転がっていた速女が身を翻し、老人の顎の下に強烈な蹴りを入れる。まだ動く片方の脚を器用に使って。
色めきだって油断しきっていた幻老斎はまともに食らってしまう。
無様にも、そのままもんどりうって倒れこむ。
「誰が、お前の自由になんか、なるものですか!」
速女はそう言い捨てると部屋の外へ踊り出した。
不覚だったわ...幻老斎が魔界の生物を召喚できるまでになっているとは...
先ほど針を打ち込まれた脚は棒のように感覚が消えている。
ここは一旦退いてやろう。
全身にしびれがまわる前に...このまま戦い続けるのは圧倒的に不利だ。
不自由な脚をひきづりながらも力いっぱい駆けていく。
今度会った時は容赦せぬぞ。覚えておれ、幻老斎!
幸い追っ手は来ないようだ。
だらしなくもあのまま失神しているのかもしれない。
召喚された魔物も主人の精神に感応するのだろうか...元来た道を急ぐ。
この洞窟を抜ければ外界だ。
そして、出た。
虎口からの脱出。
解放感が体を包む...はずであった。
しかし...空間が歪む。
なぜか速女は元居た部屋に立ちすくんでいた。
「こ、ここは...」
どこからともなく幻老斎の声が聞こえる。
ここは閉じられた世界。
お前はわしを倒さぬ限り、この部屋から一生出ることはできぬわ。
里の者はここを「幽鬼楼」と呼んでおるらしいがの。
その名は少し違うのじゃ。
本当の名は「幽鬼牢」。狙った獲物は逃すことのない牢獄。
お前は我が術中に囚われた、籠の中の小鳥のようなものじゃ。
そ、そんな馬鹿な...
新たな含み針を四肢に打ちこまれて、速女は脱力感と共に静かに床に倒れこんだ。
痺れ切って無様に転がるしかできない速女が、ふと見上げると、そこには淫猥な表情を浮かべた幻老斎の姿がある。
「ずいぶんと手間をかけさせてくれたな。まあ、そのほうがこれからの楽しみも増すというものじゃわい。どうれ、久々に女子の肌を味わってみるかのう」
老人は着物をはだけ、速女を裸に剥いていく。
きめ細かい餅肌。それでいて程よい肉付きを持つ膨らみがたまらない。
小ぶりながら形の良い双乳も欲情を呼び起こすのに充分であった。
そして下腹部に眼をやる。
漆黒の茂みの奥に、秘唇がひっそりと息づいている様がなまめかしい。
そんな極上の獲物が抵抗もできずに転がっているのだ。
胸がすくような眺めである。
「そんなに女の裸が珍しいのかしら?お生憎様。あんたみたいなひひ爺に、あたしを喜ばせることなんて果たして出来るのかしら?」
挑発的なまでの態度。
男がすることなんていつも同じだ。
逆に搾り取ってひーひー言わせてやるわ。
速女は余裕の笑みを浮かべる。
「言ってくれるわい、怖い怖い。ひひひ...じゃがな、そのほうがこちらも頑張り甲斐があろうものじゃ。腕によりをかけて泣かせてみせるわい。さて、まずはそうじゃな」
ニヤリと笑うと部屋の隅からドス黒い荒縄を持ち出してきた。
ただでさえ自由が利かないというのに、更に縛めをかけて抵抗を封じようとでもいうの?
ちょっと待ってよ...縛られたりしたら反撃の機会が絶望的に遠のいてしまう。
しかも、何をされても受け入れざるを得ない。
防戦一方の戦い...そんな...
「体の痺れはやがて無くなってしまうからな、今のうちに縛り上げておけないといつ殺られるか知れたものではない」
白磁のごとき雪肌をざらつきながら這いずり回る荒縄。
それは要所要所できっちりと体にまとわりつき、自由を奪い去っていく。
幻老斎の緊縛の手つきはさすがに慣れたものだ。
手首、二の腕は厳しく締め上げられ、背中にそろえた指の1本1本まで縄がけしていく執念。
そして余った縄を前にまわし、その美乳を搾りとるように二重三重に締め上げていく。
ああ、そんな、そこまでしなくても...う、動かない...
これでは速女は腕はおろか、指先一本自分では動かすことは出来ない。
いかに力を込めようとも、縄目が緩む気配は全くなかった。
また、下半身にも同様に厳重に縄がけをしていく。
膝の所で折り曲げ、M字型に開脚した状態で固定していくのだ。
太股はもちろんのこと、両足首も括り付けて縄で結ぶ。
そして余った縄尻を背中の結び目にくくりつけ、ピンと胸をそらせたエビぞりの無理な姿勢を強いるのだ。
体のありとあらゆる所が縄で絡めとられ、もはや自由に動くのは首から上くらいのものである。
まずいわね...
これだけ幾重にも緊縛されたら、いかに速女といえども容易には縄抜けできない。いや、不可能といってもいい。
それだけ反撃のチャンスも少なくなるということだ。
縄の締り具合を確認すると、幻老斎はほっと一息ついた。
「これで痺れ薬の効き目が切れたところで、お前は身動き一つできぬというわけじゃ。ははは、悔しかろう」
「ふん!ほざくがよいわ。今に見てるがいい!」
憎悪の炎を燃えたぎらせた瞳を幻老斎に向ける。
いずれ、機会を見て、殺す。
速女の頭の中にはそれしかない、が...
実際の状況は芳しくはない。
「縛りつけられて肉ダルマのように転がるしかないくせに、まだそんな生意気な口がきけるのか?まあいいだろう、お前にはドンドン卑劣な策を用いてやろう」
そう言うと、幻老斎はギヤマンの瓶を持ち出した。
中は丹色のあわ立つ液体で満たされている。
「これはわしの家に代々伝わる女殺しの秘薬じゃ。これを飲まされたら最後、どんなに身持ちの硬い女であろうとも、体がうずいてたまらなくなるという強力な催淫薬なんじゃよ。お前も女忍者なら媚薬に対する多少の耐性はあろうが、それとて到底防ぎきれるものではないぞ....ヒヒヒ」
ヘドが出そうなセリフである。
しかし得体のしれない怪しげな薬をあれだけも飲まされたら、いったいどうなるのか?..言いようのない不安がよぎる。
かっちりと緊縛されている不自由な裸身を必死に揺すりたて、何とか飲むまいと顔をそむける。
が、鼻をつままれ苦しくなったところへ瓶の口をねじ込まれ、大量に嚥下させられていく。
「性感中枢に直接訴えかけてくるからのぉ。これでも強気でいられるか楽しみじゃな、速女ちゃん...クヒヒ...」
楽しそうにピンッと乳首を指先ではじく。
確かに今までの媚薬に比べると効き目はケタ違いのようだ。体の内部から防ぎようがない官能の炎であぶられていく感覚。それは次第に圧迫感を増し息苦しくさえなっていく。その甘美な感覚を速女の女の性感帯が敏感に捉え、とろりと反応を始めるのだ。
な、なによ、これ....
裏切りを見せる肉体を叱咤しながらも、この絶体絶命ともいえる状況をなんとかしなければいけない。
しかし、今の速女にとっては残された選択肢はわずかしかなかった。