速女は懊悩の極地にいた。
なぜ感じてしまうのよ!!そ、そんな馬鹿な!!
耳を触られたくらいで、う...くっ...ああっ...
耳穴深くまで挿し込まれた平凡な耳かきが、幻老斎により巧みに操られると何か別の生き物のような躍動をみせ、無駄のない動きで速女を追い詰めていく。
穴の中で蠢く度に、奏でられる恐るべき悦楽の旋律。
コリコリと側壁をこすりたてるほどに、脳髄の隅々に快楽の振動が響き渡る。
そして頭蓋の中で反射し、共鳴し、耐えがたいほどに増幅されていく波動。
速女は、耳の奥底から絶えず繰り出される甘美な調べしか認識できないくらい、どっぷりと快楽に身を委ねるしかなかった。
されるがまま、与えられるがままに快感に押し流されている。
肉欲に狂う。
まさにそう表現するのがふさわしい乱れぶりである。
先ほどまで一文字にきつく結んで、内面に秘めた強い意志をあらわにしていた桜色の唇も、まるで呆けたようにだらしなく開ききり、意味不明のうめき声とともに涎を垂れ流している。それに加え、目からは涙、鼻からは鼻水がそれぞれ顔を伝っているのだ。もちろん下半身に視線を移せば、女の泣き所からは以前にも増して女の苦悶の象徴ともいえる淫液があふれ出ている。
全身の穴という穴から汁という汁を垂れ流す人形。
そう表現するしかない凄絶な眺めであった。
その間も絶えず耳の穴に対するいたぶりは続いている。
脳髄の中に直接肉棒を挿入されて荒荒しく掻き回される...脳髄を直に陵辱される汚辱感と、その見返りに与えられる至上の快楽。
その狭間でもみ抜かれる速女の官能。
あらぶる快感の大波に翻弄される一艘の小船。
それが速女に残された理性だ。
しかし強大な敵の前に、いまや風前の灯火というところである。
「あが...くはぁ...ふひぃ...くぉくぉくぉわれる....」
どうすればよいかなどは、皆目検討もつかない。
なんとかしなければ...でも...か、身体がいうことを聞かない...
通常、忍びなら縄抜けの術など造作もないことだ。
しかし幻老斎はそれを封じこめるために、指まできっちり縄がけしてあるのである。
せめて、この腕が自由になれば...
速女はあがくが、縄が緩む気配はない。
このまま快楽の虜に成り下がるのか?
いや、いやよ!そんなの!
ああ、でも...そんな...ふぎぃぃぃ!!!
脳髄を桜色の淫靡な性欲で染め抜かれ、まともな思考力すらうばわれた今、原始からある本能で快楽を感じ、動物的な反応をあげるしかない。
快楽に揺さぶりたてられながらも必死に抵抗している精神力とは裏腹に、口からは咆哮にも似た悲鳴がほとばしり出るのだ。
「く...くるひぃの...くるひぃの...くるひそうで、あはぁ....」
幻老斎はそんな速女の狂乱振りをじっと眺めている。
なんじゃ?もうこのオモチャはいかれてしもうたか?
もう少しは頑丈かと思っていたがな...
しかし並みの女子なら媚薬に狂うた時点で終わりじゃからな。
ここまでもっただけでも....いやいや...
わしとしたことが甘い甘い...こやつはまだまだ壊れ果てるまで責め嬲ってやる
身体も、そして心までも完膚なきまでに屈伏させるまで....
そのときこやつはどんな醜態をさらすのじゃ...?
いや、堕ちてなお輝くばかりの美しさを保てるのか...?
ふふふ、楽しみじゃ....
いやぁ...また、また....イかせないつもり...
もう少し....もう少しなのに...くぅぅぅ....
性中枢に直接働きかけるこの秘術は、性感を何倍にも高めるが、これまた絶頂に押し上げることは決してない。
そのため、生殺し地獄の味を身体に染み込むくらい覚えこまされているのだ。
「ははは、苦しいか、壊れそうか? イキたいか.....?もう」
「......ふぐ、ん....だ、だめよ....」
「くくく、無理をしおって。このままでは、決して満足はできないぞ。そのためにはなぁ、女の急所という急所をいやというほど弄くられないとなぁ.....」
息も絶え絶えといった風情の秘裂から吐き出されている淫液を指で掬い取り、その粘り気を楽しんでいる。
その糸の引き具合や濃い性臭からも、女としての苦渋が見て取れる。
胸のすくような思いだ。
ざまあみろ、くくく
幻老斎は片頬が引きつるのを抑えることができない。
「ん? いいのか、このままで。まあ、お前の口から直にお願いされれば考えてやってもよいがの...これでもまだ強情を張る気かな? いいかげんにしないと本当に気が狂うてしまうぞ」
「ああああ、そ、そんな...はひー!! 」
汗みずくの喉元を反り返らせたまま速女の思考は硬直する。
肉体はとうに陥落し、最後の一線を越えることを渇望している。
それは彼女の身体中を覆うヌメリを見ればわかる。
だ、だめよ! こんな卑劣なやつに頭を下げるなんて...
己を戒めるように叱咤する。
忍の誇り...いや、女の意地か。
でも...でも...でも...
夜通しにわたる執拗な責めでクタクタにくたびれた肉体に加えられる激烈な責めと、頭の中に次々押し寄せる快感の高波は彼女を確実に断崖絶壁に追いたてていくのだ。
唾液でぬめ光る唇をあえがせながら、うるんだ瞳を幻老斎に向ける。
言葉よりもその目は正直だ。
あ、あたしが堕ちるのを待っている...
それまで永久にこの状態を続けるというのね...
いやよ...た、耐えるのよ..
でも、それではこの地獄の苦しみを永遠に味わうことに...
そ、そんな...い、いやあぁぁぁぁぁぁ
内面の絶叫と共に、速女の口から屈辱の言葉が吐き出されようとする。
「お、お願...うぐぅぅぅ!!! 」
え?な、何よ、これ!!
しかし開放を求めるその言葉は、発せられることはなかった。
その時を待っていたかのように幻老斎は、非情にも手にした鉗口具を速女の口にねじ込んだからである。
丸い筒状になった拘束具は、口の開閉はおろか、舌の動きすら封じ込んでしまい、速女はたちまち言葉の自由を奪われてしまう。
ぴったり収まる様に埋め込むと、その両端についていた紐を首の後ろに回してきつく結びつける。
これで速女は自分では外すことができなくなったのだ。
「ん、うごぉ、ぐ、ぎゅぅぅ、ぎ、ぐぎぃーーー!! 」
「誰がお前をそう簡単に楽にさせるものか...速女ちゃん、ひひひ ん?それでもしゃべれるものならしゃべってごらん...え?」
「ん、んぐ、んぐぐぐーーーー!」
「ははは、何を言ってるのかわしにはわからんよ。もっと責めて欲しいのかなあ? 」
「ん、がぁごぉ...んぐーーーー! 」
必死に顔を降りたてて、抵抗する。
なぜここまで、弄ばれなければならないの...?
しかも、それに対して無様に反応してしまう、あたし...
見苦しい...
いつからこんなにあさましくなったの...
それに....いつからこんなにだらしなくなったの...
いくら媚薬に狂わされているとはいえ、こんなに淫らに答えてしまうなんて...
口にはめ込まれた忌まわしい拘束具をなんとか吐き出そうとするが、不自由な舌先で突ついたくらいではビクともしない。
自分で口を閉じることもできず、口腔内の粘膜を覗かせながら大きく開けたままにしておくしかない。
しかもそれは、起死回生に狙っていた幻老斎の舌を噛み切ることができなくなったことも意味するのだ。
まさに唯一のチャンスすら奪われようとしている。
絶望的な状況だ。
一体どうすればいいのよ...うぐっ!!
崩れゆく官能の中で煩悶する。
老人が何もせずとも、刻々と過ぎる時間が速女を肉欲の泥沼に引きずり込んでいく。
残された時間はもうわずかしかない。
一刻も早い事態の打開が必要である。
それなのに、今また口の自由まで、もぎ取られたわけだ。
身体の自由が奪われていく度に、気丈な精神を守護する役目の鎧も一枚、一枚剥ぎ取られていく。
そんな圧倒的に不利な戦況でも戦いつづけなければならない。
それが忍のおきて。
決して自決は許されず、任務を敢行しなければいけない。
い、いつか機会はあるはずだわ...そ、その時までなんとか耐え切るのよ...
でも、一体いつまで...
期限のない我慢を強いられることは、精神的に最もつらく、厳しいものだ。
踏ん張りがきかないからだ。
それでも速女はやるしかなかった。
「ん...うぐ...ぐ、んぐ....」
荒荒しい息を上げる速女の口元に指をあてがい、垂れ落ちるに任せた唾液を指の腹でぬぐう。
そのまま自分の口に運び、うまそうにしゃぶりたてる。
「若い娘の味がするわい。やはり直接味わってみるかのう。どれ、今度こそ舌を吸ってやろう...」
そう言うと薄汚い顔を近づけてきた。
速女になすすべはない。
幻老斎は、瑞々しい唇にむしゃぶりつく。
己の舌で美しい獲物の口内に溜まる唾液をねぶりとっていくのだ。
このような美女だと、唾液までが芳醇な香りを秘めておるようじゃ。
興奮した老人は、粘膜を削り取ろうかという執拗さでえぐっていく。
歯の付け根から歯茎まで、老人の蹂躙の及ばぬところはない。
一方速女は眉の付け根を寄せて、苦しげに悶えるが口を閉じることもできない以上、抵抗もたかがしれている。
幻老斎も速女の意思など一切無視して、それが己の所有物であるかのような傍若無人な振る舞いをして見せる。
そうすることによって、肉奴隷としての立場を教え込むかのように。
「どうれ、今度はわしのほうから飲ませてやろう」
そう言うと老人は腐臭のするような己が唾液を、無理やり飲み込ませていく。
ぴったり唇で塞がれている以上、嫌でもそれを飲み込まざるをえない。
「んぐ...ぐぅ...ゴク...ン」
そしてたっぷりと舌を絡ませてくる。
淫猥な蠢きで舌先を吸われ、これでもかとばかりに唾液の交換を強要される。
「うぐ...ぐ...んんっ!! 」
そんな速女を見ていると、もっと虐めてみたくなる。
徹底的に汚しぬきたくなるのだ。
それが美女の宿命か....?
幻老斎の頭に暗黒の妄想が渦巻く。
ああ、これ以上何をしようというの....
不安げにそれを眺めるしかない。