十六夜残月抄
九の巻

再び床に引きずり下ろされた速女。しかしその身体をぐったりと弛緩させたまま動く気配も無い。血の通った肉人形。まさにそう形容するのがふさわしい。

「もはや抵抗する体力も気力も残されてないというのか? ふん、反応がないとはつまらんわい。じゃが、この原液を垂らされると否が応でも飛び跳ねたくなってくるとて...」

楽しげにそう言った老人は速女の滑らかな肌に悪しき媚薬の原液を垂らしこむ。あしき淫虫の体液。その原液が女を狂わせる効果は計り知れない!
その途端にかすかに息づいていただけの肉塊がひくりと反応を見せる。

あぐぅぅぅ!!! こ、これ....きつい!!!

まるでやけどでもしたかのような灼熱の感覚。
皮膚に触れた瞬間、そこから身体中が濃艶な炎に包み込まれてしまうかのようだ。
今まで飲まされてきた媚薬も、元々耐性があるはずの速女を突き崩すのに十分な威力を持っていた。ジリジリと内部から官能をあぶりたて、その勢いを次第に強めて獲物を肉体的・精神的に追い詰め、悦楽の泥沼に身も心も溺れさせていくのだった。しかし今回の異形の体液は触れただけで猛烈な刺激が湧き上がる。
刺激・・・確かに最初はそう感じる。しかししばらくすると、それが快楽の塊だったことに気づかされて呆然となるのだ。あまりに強烈すぎて、それを快感だとすぐには認識できなかったという事実に。想像を絶する認知不能の悦楽。それがどれほどのものか!

「ひー、ひゃ....ひぐ....ひゃひ!!」

激烈な破壊力を持つ媚薬が肌に触れる度に速女は悲鳴にも似た叫びをあげざるをえないのだ。既に身体中は怪しげな体液と汗で粘りついている。

「さぁて、ここはどうかの?」

遂には恐れていた乳房への攻撃が開始される。焦らされまくってはちきれんばかりに膨らんだ美乳へ更なる屈辱を与えるためだけに淫虫の液体が垂らしこまれるのだ!

!!

甘い果実の房。つんと尖って自己主張をしている乳首。
そこを快楽という名の矢で何十箇所も集中的に串刺しにされたような鋭い刺激。

あぐ!!きつい....きついわ!!どうなるのよ、あたし....
まるで乳首が捻じ切れんばかりに、ズキズキとした甘美感(そう、紛れもない快感)が速女を苦しめる。しかも官能をあぶり立てる刺激は決して途切れることはなく、断続的な波として押し寄せてくるのだ。たぶんこの忌まわしい体液を完全に洗い流すまでは、その効果が持続するのだろう。
身体中から湧き上がる官能のうずの前になんとかして速女は自我を保とうとする。
負けてはダメ....幻老斎を倒すまでは....でも、でも、でも!!!
たまらず声をあげようとするが、口からは獣じみた喘ぎ声をあげるだけだ。

「だいぶいい色になってきたな。くくく、もうたまらんじゃろう。言葉にできんでもお前の眼が正直に語っておるわい。それに、お前のもうひとつの口もな...」

ドクドクと蜜を吐き出している秘裂。誰が見ても肉体が陥落していることは見て取れる。

「苦しいだろう、じゃが念には念を入れて、もう一押ししておこう。ここにたっぷりと注ぎ込んでやる 」

そう言うと残った淫液を速女のもっとも秘められた個所に注ぎ込んでいくのだ。

ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!

そして悶絶。

脳天まで図太い槍で貫かれたような破滅的な快楽の波動。頭の中を閃光がひた走り、身悶えることすらままならない。だが幻老斎は容赦なく秘部の隅々や、淫核も剥き出しにしてしっかりと塗りこんでいく。既にあふれるばかりに注ぎ込まれているのだが、そんなことはお構いなしに老人はやりたいようにやっていくのだ。

熱情、悦楽、煉獄、破滅...
ぐるぐると同じような言葉が頭の中を回りつづける。
こ、これを耐えるのは、つらいわ....もう、く、狂いそう...でも耐えるしかないの? しかし、いつまで...
それは決して終わることのない勝負であった。

速女の苦悩をひとしきり楽しんでから、老人は仕上げに入る。何やらつぶやいたと思うと老人の輪郭がぼやけていく。気づいたときには幻老斎の姿は2つにわかれていた。いや、その数は更に増える。3人、4人、5人...遂には全く同じ姿の7人の幻老斎が現れる。

「まやかしの分身とはわけが違うぞ。ここにいるのは全て実体。みんな同じ『わし』なのじゃ。これからは7人がかりでたっぷりと責めてくれるわ。ひひひ、楽しみじゃろう?」

7人の幻老斎は一斉に速女の裸身に群がっていった。

夕暮れの薄闇があたりを覆いはじめている。帰路を急ぐ鳥達の群れが鳴きながら飛び去っていく。山々には紅葉が映え、彩りを添えている。何事もなく一見平和な情景。
遠くの方から鐘の音が聞こえる。麓の村ではいつもと変わらぬ生活が営まれているのだろう。しかし幽鬼牢の一室では速女はねっとりと責め苛まれているのだ。
汗みどろになって奮闘する肉体。いや、もはや奮闘していると言えるだろうか?汗、涎、涙、淫水...身体中からありとあらゆる汁を垂れ流しているため、床に吸収しきれない分がそのまま浮かび上がっている。その上で身体をくねらせる肉の塊。その優美な裸身に群がる7人の醜悪な老人。

「むー、むむむ、うぐ、むぅぅぅぅ!!」

一人は速女の口をぴったりふさぎ、延々と口の中を嘗め回し、ねぶりとり、飽きもせずに唾液の交換を続けている。がっちりと逃げられないように顔を両手でつかみ、舌を絡めとっているのだ。
その両脇には2人の幻老斎が、まるで挟みこむようにして陣取り舌と両手で休みなく速女の体を愛撫するのだ。乳房の付け根に舌を這わせているときは腋の下を手でなぞり、また脇腹を舌で嘗めとっている時は手を乳房の麓に伸ばすというように、それは実に手馴れた連係を見せるのだった。元々同じ幻老斎なのだから、それは当然のことかもしれない。
また両脚にもそれぞれ担当している幻老斎がむしゃぶりついている。足の指先からふっくらとしたふくらはぎ、熟れた太腿に丹念に唾液をまぶしこんでいき、指先で微妙になぞり上げるのだ。
もちろん、最も速女が恐れる部分も容赦しない。ここはご丁寧にも二人掛かりで責め上げる。後ろの急所を担当しているものは、うっすら息づく肛門の皺を伸ばすかのようにしてじっくり指先で揉みほぐしていく。最初は硬さも見えたそれも次第に熱を帯び、しっとりと程よく湿り始める。すると意地悪にも老人は肛門に指を出し入れさせ、思いも寄らぬ感覚で速女を悩ませるのである。そして秘唇の周辺には指と筆で弱すぎず、また強すぎもしないまさにギリギリの愛撫を加えるのだ。決して絶頂に達することのないほどに、そして一時も快楽地獄から身体を休ませるなんてことは無いように。秘裂が快楽に反応し、止めど無く流れ出る密と共に注ぎ込まれていた媚薬も吐き出されてくると、その分の媚薬を再び密壷に注入していく。それぞれの幻老斎も忘れた頃に速女の身体のあらゆる所に媚薬を落とすのだ。その度に仰け反る女体。
悪夢のような七箇所責めだった。それぞれの幻老斎が手と舌をフルに使い、数十箇所を漏れなく責め立てるのだ。そしてそれらの点が線になり、線が面になり、有機的に結びついて速女に一斉に襲いかかってくる。身体は分身していても意識は一つだからこそできる技なのだ。
初めのうちは、速女もなんとか防御を固めようと懸命だった。だが幻老斎の唇を振り切ろうとすれば、胸元から押し寄せる快楽の波が、その邪魔をする。胸元に意識を集中すれば、今度は股間から耐え難い悦楽の激流が巻きあがるのだ。しかし身体のありとあらゆる所から同時に加えられる責めに対してどうガードすればいいというのだ?
そして速女はまたしても焦らしに焦らされるという焦燥地獄を味あわされていた。人外の媚薬により極限まで高められた敏感な突起を無惨にも放置され、その周辺ばかり煽られるつらさ...しかも延々と昨晩から続けられているのである。只の一度の絶頂も許されずに。いかに気丈な速女といえども気がおかしくなるような責めであることに間違い無かった。

「ふほぉ..くふー...はふー...」

「夜通し眠ることも許されず、体力を削ぎ落とされた体を性感だけ無理矢理高められる。しかし肝心なところには一切触れてもらえない。いくにいけないもどかしさとつらさ。これぞ色責めの極意じゃわい。どうだ!そろそろ、ここに突っ込んでほしくてたまらんのではないか? 」

疲労困憊し、夢見心地に責められつづけるつらさ。その問いかけには速女は思わずうなずきかける。

ああ、このままでは本当におかしくなってしまう...お願い、なんとかして...

「う、うううぅ、う....」

しかし老人がピッタリ口を塞いでいるので、それは言葉にならないのだ。

「なんじゃ?何を言っているのかわからんわい。もっと可愛がって欲しいのかな? 」

「うう!!!うううー!!!」

必死に首を横に振り否定する速女。そんな彼女を楽しげに眺めながら残忍にも再びチリチリと身を焦がすような焦れったさを与えていく。

そんなことが先ほどから何回続いているだろうか...?
速女の心はボロボロに壊されていく。

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