十六夜残月抄・崩壊編
第11話「見えない敵」

後、ほんの少しのところで絶頂に達するというのに、硬直した腕は石になったかのように動かすことができない。
それに、今の声はいったい...しかも一瞬辺りの景色もゆがんだような気が...
用心深くあたりを見回してみる。側には、かって幻老斎と呼ばれていた男の骸が冷たく転がっているだけだ。死んでいるのは間違い無い。
行灯の明かりが揺らめく中、室内に眼を凝らす。
後は....誰もいない。
物陰に人が隠れる余地もなければ、そんな気配すら感じられないのだ。
気のせいか....疲れているの...?
少し前までの、悪夢のような陵辱。己が肉体に加えられる数々の常軌を逸した責め。
それを考えると、幻聴が聞こえたところで無理ないことなのかもしれない...だが...
いいようのない不安感が速女を襲うのだ。なにかとてつもなく恐ろしいことが起こる
前触れでもあるかのような。
それは....

・・・どこを探しておる。わしはここじゃ・・・

!!
その瞬間速女は思わず息を飲みこむ。今、なんと...
気持ちを落ちつけ、何が起こったのかを理解しようと努めてみる。
が、何度考えたところで同じ結論しか出ない。
声はなんと頭の中に直接響いてきたのだ!
いったいこれは...あまりのことに困惑の色を隠しきれない。

・・・驚いているようじゃの。くひひ。死に際に唱えた離魂転生の秘術。肉体は死しても、魂は離れ、身近なものの身体に潜入、内からそれを支配するだ。お前は知らぬじゃろうが、わしはこれまで何度もこれを繰り返し、数百年にわたって存在しつづけてきたのじゃ。所詮そこらのくノ一とは年期が違うというものよ・・・

バ、バカな! そんなことできるわけない!
心では強くそう思っても身体はてこでも動きそうにはない。指先一本まで針金で固められたかのように動かせないのだ!

・・・先ほどは本当に危なかったが、今度はそうは行かぬぞ。ひひひ。それにわしも、いいかげん老いさらばえた身体に飽き飽きしておったところだったのじゃ。そこに都合良くお前がやってきたというわけ。飛んで火に入る夏の虫とやらじゃな。その類まれな運動能力。それに...お前はまだ若い。そう、これが肝心じゃな...まさにわしが捜し求めていた条件にぴったり見合う肉体だったというわけだ・・・
相変わらずその声は不気味に頭の中で響き渡っている。

何を勝手なことをほざく!ふざけたことを言うな!
そう叫び出したかったが、声すら出すことも出来ない。
腕を動かそうと必死に揺さぶるがが、万力にでも捕まれたかのように微動だにしない。内面を冷や汗が伝う...
なぜ...

・・・わからぬか、このすばらしい身体、その運動中枢は、もはやわしの支配化にあるのじゃよ。ほーれ、わしならこのように自在に動かすこともできるぞ・・・

突然手が胸めがけて動き出し、柔々と揉み解し始める。まるで自分の腕であってそうではない。それ自身が意思をもったかのようだ。
それに対して、いとも簡単に身体は反応を見せる。これまた心とは裏腹に...
欲し始めたのを見透かしたかのように、すぐさま手の動きは止められる。
あぐぅぅ、な、なんで...

・・・どうじゃ、お前はもはや自分の意思では指一本動かせぬわい。しかし感覚だけは未だお前に残されておるのじゃ。性感も含めてな・・・

今度は、両手が同時にせりあがり、双乳にあてがわれる。それを撫でさする”幻老斎”

・・・もうすぐ、この身体が完全にわしのものとなるのじゃ。この美貌、恐ろしく均整のとれた肉体。それが手に入るのじゃ。そう、お前の精神を崩壊させればな。お前が泣いて負けを認め、わしの前に屈伏すればな・・・

そ、そんなことさせるものですか!この身体はあたしのものよ!!

・・・果たして、どこまでその頑張りがきくのかな?昨夜来から責められつづけてくたびれきった上に、だらしなさを増した身体でどこまで耐えられるのか...少し責めたてればたちまち敏感すぎる反応を見せるではないか・・・

速女の眼の先には、肥大化した陰核がだらりと横たわっている。確かにこのままでは...

・・・最も忌み嫌う色責めの前に、お前は屈伏することになる。しかも直接の責め手はかつて自分とともに数々の戦いを勝ち抜いてきた手であり身体なのだ。それをお前はどうすることも出来ず、ひたすら甘受するしかない。屈辱と懊悩。くくく、その深淵でのたうちまわるがよい・・・

そう”言う”と、再び見事に盛り上がった肉丘をいとおしげに愛撫する。ぴったりと肉の果実をむさぼるように手を当て、その重量感を楽しみながらも、最初はさわさわと、そして次第に強く、大胆なまでにその動きを高めていく。揉み上げるたびに、たわわに揺れる肉球の流麗な旋律。甘美な響きは速女の官能を確実に貫いてくる。
本来ならその動きは、凝り固まった性感を解きほぐす一服の清涼剤の役目を果たしたはずである。しかし今は地獄の快楽しか与えてはくれないのだ。

く、なぜこうも簡単に感じてしまうの...ダメ、耐えなければ...でも、でも...

いかなる煩悶をしても、媚薬に狂った身体はひとりでに踊り始める。陰核同様に普段の数倍に感覚が鋭敏になった乳頭も、うずき狂っているのだ。

・・・ひひひ、我慢しようとしても無駄無駄...お前の苦悩は手に取るようにわかるぞ...この身体はもはやわしのものでもあるのだからな。それに消耗しきっていて、耐えられるだけの体力も、最早残っていまい。どうれ、もう少し遊んでやるか・・・

双乳を揉みしだきながら、次第に上方に息づく乳首へ責めの矛先は向けられていく。

あぐぅ、ダメ...今そこを責められたら...

叫び出したくても、その自由すらないのだ。肉体の檻の中に閉じ込められた速女の精神。自分自身の身体といえば、本来己が内面の弱さを守るべきような存在であるはずである。それが逆に、精神をガードする役目をかなぐり捨てて、極限まで追い詰めようと敢然と反旗を翻したのである。抵抗を封じられた速女はそれをどうすることも出来ず、今はただひたすら耐えるしかなかった。
遂にはぷっくり尖った乳首に手が触れられる。その剥き出しの乳頭を軽くつままれ、コリコリと玩び、時には軽く捻られるのだ。

くはぁ、く....ひぃぃぃぃ....

圧倒的な快美感。その響きをどう表現すればいいのかわからない。ただひたすらに、そして執拗に精神を揺さぶりたててくる快感の波。

あふ...やめて、もう...もう...

・・・ははは、ずいぶん苦しそうだな...今からそんなことでは到底身体がもたんぞ。でもそれが楽しんだがな...ほれほれ、もっと苦しめ・・・

これでもか、これでもかと言わんばかりに乳首をいたぶってくるのだ。

ああ、く、苦しい....苦しいわ...本当に、いったいどうすればいいのよ...
速女は身体を打ち振るわせ、泣き叫びたかった。それで少し気を紛らわせることができるのなら...
例え、きっちりと緊縛されていたとしても、身悶える自由くらいは残されている。
身体にわずかの自由でもあれば、抗うことで気を奮い立たせ、邪悪な責めに立ち向かうことができるかもしれない。いや、少なくとも拡散させる効果くらいはあるだろう。しかし精神と肉体が完全に分離させられ、無防備な精神が一方的な攻撃に曝されているのである。幻老斎の邪術により、無残にも五感のみが残されているが、それも逆に速女を苦しめるだけである。それをどうすることもできない。できないのだ。いや、それはわかっている、わかっているのだが...

・・・さぁて、肝心なところはどうかな? ・・・

片方の手が秘められた股間に降りていく。はっと速女が我にかえる。
そ、そこは...そこだけは....これ以上されたら、もう....

・・・くくく、いい泣き声じゃわい。そんなに言うのならたっぷりと責めたててやるわい。覚悟するのじゃな・・・

まずは指先を軽く秘裂に沈めこむ。おびただしいまでにあふれかえった樹液のせいで、ねちょりと水飴をかき混ぜるような音までが聞こえてくるようだ。一本の指先で軽く円を描くように動かしていく。トンボを取るときに、目を回そうと人差し指を回転させる動きにそれは似ている。
もちろんそんな児戯に等しい行為をしようものではない。狙うは極上の獲物、名にしおう麗しのくノ一、速女なのだ。
ゆっくりと襞を絡めとるようにかき混ぜてみる。その動きはたちまち飢えきった子壷全体に響き渡ってくるのだ。

そ、そんなに動き回らないでよ...ぐふっ!!

速女のおびえた表情を楽しむかのように、すぐさま指の数が2本に増やされる。熟れ切った女体の内部は、すでに蕩けきっており、速女の意思とは関係なく、差し込まれた指先にねっとりと絡み付いてくる。自らの膣に締めつけられる指先の感触すらも、速女にも感じ取れる。自分の指で自分を苦しめていく、そしてその反応を指先でも感じとる...そんな理不尽な感覚が、彼女をより混乱させ、狂わせていくのである...

な、なんとか止めないと...ああ、でもダメ、掻き回さないで...くぅ! 止まらない、止まらないわ!!!

・・・無駄無駄...お前の身体の自由は完全に奪っておるわい。よがり狂いたくとも、身じろぎひとつ出来ず、喘ぎ声すらあげられないのは苦しかろう。ふふ、ではお前に代わってわしが代弁してやろうか?少しはすっきりするかもしれんぞ・・・

「ああーん、気持ちいいわ...もっとぐちょぐちょにかき混ぜてぇ。速女、狂っちゃう」

!!
突然速女の唇が開かれたかと思うと、そこから出たのはあられもない台詞だった。声帯も今や”幻老斎”の支配下にある。それゆえなせる技だ。
ち、違うわ、そんなこと思ってない・・・!!
あまりのことに心の底で絶叫する速女の精神。しかしそれをあらわす術は完全に封じられている。悶々としたやるせなさが高まっていく。
それを知って”幻老斎”は更に言葉によるいたぶりを強めていく。

「もっとぉ、もっとよぉー、根っから淫乱なあたしの身体、これくらいではまだまだ満足できないわよー、くふふぉぉぉぉ、くひぃ、壊れるくらいに掻き回してぇぇぇぇ!!!」
それに比例するかのように、指先の玩弄が熾烈を極めていく。透き通るように白い穢れを知らぬかのような指が、まるで別の生き物であるかのような膣奥深くまで挿入され、女体の最もつらい部分を内部から責めていくのである。
淫らな台詞を吐き散らかし、自らの指で慰めながら痴態を見せる美女...第三者が見れば、単に色気づいた雌にしか到底見えないこの姿。その奥底で苦闘している速女の本体を知ることはできない。
そんな状況が、輪をかけて速女の精神を追い込んでいくのである。
言葉と指によるいたぶり...絶対防御不能。
まさに絶体絶命の危機である。

「あらぁいいものが転がっているじゃないの。あれをゴシゴシしごくと、どんな快感が湧き上がるのかしら...ねぇーん、早く、早くぅぅー、地獄の底まで届くような灼熱の快楽に身を焦がしたいのぉ、もっと淫らなことしてぇ」

乳房をいたぶっていた手が静かに股間に伸びていく。狙うは最も恐れていた部分、肥大化した陰核である。先ほど死地を脱することが出来た切り札が、今や最大の弱点になり下がっている。それも肉責めに関して言えば、最悪の急所...
クリティカル・ポイントだ。

・・・ぐふふふ、まだまだわしの責めは始まったばかりじゃからのぉ。たっぷり二人で楽しもうぞ、速女ちゃん...うひひひ・・・・

BACK

TO BE CONTINUE



十六夜残月抄のページへ戻る

投稿のページへ戻る

小説のページへ戻る

トップページへ戻る