十六夜残月抄・崩壊編
第12話「焦燥地獄」

くぅぅ、やはりそこを狙ってくるのか...
じりじりと花芯ににじり寄る自分の指先。今は全く己の意思では動かせない苦境...
この状態であそこを擦りあげられたら、ひとたまりもないわ...
しかもこれから味わう快楽は全く未知のものなのだ。この術を使用し性欲が数倍に高まった状態で、あそこを色責めされたことなどもちろん未経験だからなのだ。
どう耐えればいいの...? そんなの全くわからないわ。ああ、何とかしなければ、あそこを...
このままだと好きなようにイカされてしまう...
それがわかっていてもどうすることも出来ない。
遂には棒状になった陰核を握り締められる。

あぐがぁ・・・・・!!!
その熱情をどう表現していいのかわからない。無様にさらけ出された女の急所を容赦泣く責め立てられるつらさは筆舌に尽くしがたいものがあるからだ。たちまち頭の中が白濁し、官能の薄もやが掛かり始める。
ああ、て、手を離して...本当におかしくなってしまうわ。

・・・幾らでもおかしくなればよいではないか。ふふふ、これならどうかのぉ・・・

陰核にそって軽く握った手のひらをゆっくり上下させる。それだけでもビクビクと敏感すぎる反応を見せ、たちまち以前の勢いを取り戻し、たくましく隆起していく。
ずりゅ、ずりゅぅぅ・・・たっぷりと汁気を帯びた陰核は、擦るたびに淫猥な旋律を奏ではじめる。

・・・ここはわしの腹を切り裂いた憎んでも余りあるところじゃからな...特に念を入れて可愛がってやるぞ...くくく・・・・

女陰棒をじっくりしごきながら、秘裂への責めも忘れることなく、速女の官能を躊躇なく追い詰めていく。かさにかかった責めの前に、なす術もなく恥辱の絶頂に向けて押し上げられていく速女。
「ああーん、た、たまらないわぁぁ...もう、もういっちゃいそうよぉ...」
その口からは、またしても淫らな台詞が吐き出されていく。
もうやめて、うるさい、うるさいったらー!!!
心の底では敢然と立ち向うつもりなのだ。それなのに、それと相反する声が発せられてしまう。確実に戦意をがもぎ取られていくようだ。

身体の自由だけでなく、心にまで枷をはめるというの....
憎しみを込めたその思いも、溢れ返る欲情の前にたちまち飲みこまれていってしまう。
あまりにも先鋭化された女の急所を情け容赦なくしごかれまくられては、感じないほうがおかしいではないか。
くうううう、ダメだわ...が、我慢できない...ホントにおかしくなっちゃう...ああ、いく、いってしまうわ!!
忽ち悦楽の頂点に向かって押し上げられてしまう。

しかし、待ち望んだその瞬間はやってこないのだ!
後ほんの少し、ほんの1秒もいいのだ。指先の律動が続けられていれば達するというところで、またしても責めの手が離されていってしまったからだ。
あぐぅ、ひどい...ど、どうしてなの???なぜ...
その仕打ちには戸惑いを禁じえない速女。

「ふふふ、簡単には楽しませてあげないって言ったでしょ? あなたくらいかわいい人は、並の責め苦じゃ与えた気にならないわよ。もっと、もっと遣り切れなく堪らない切なさを。そう焦燥の地獄でのた打ち回るくらい強烈なのを味あわせてあげないと満足できないのよ。ねぇ、もっとあたしといっしょに苦しみましょうよ。ふふふ...」

肉体と同化を果たしつつある”幻老斎”が言い放つ非情な宣告。その言葉遣いが気に入ったのか女言葉で話す”幻老斎”。
いや、遂には速女の精神の一部をも取り込んで、同化しつつあるのかもしれない。速女の中のもう一人の”速女”...

またあの気が遠くなるような焦らし責めが始まるというの...?
速女は今になってようやく幻老斎の恐ろしさが、身にしみてわかったような気がした。







ああ、もう...うぐっ!! イク、イクわ...あああ、またなの! イケない、イケないの??早く、ねぇ、最後までしてよ、お願い、お願いよ!!

あれから幾度、絶頂寸前での生殺し状態が続いているだろうか?肉体が悲鳴を上げている。絶頂寸前に追い込まれたのを素早く察知すると、そこで無情にも責めが中断されてしまうのだ。それから9合目、8合目としばらく官能の熱が無理矢理冷まされていく。そうしておいてから、また同じことが延々と繰り返されていくのである。悪夢のような焦らし責め。それは決して速女に愉悦を与えることはない。ただ彼女を執拗に苦しめるだけに行われる性の拷問なのだ。美しき獲物を苦悩のどん底に叩き落す肉刑...

「うふふ、この身体のことならあたしもよーくわかるから、あなたがイキそうになった時も手に取るようよ。そうれ、これなんかどうかしら?」

捻るように女陰棒を責め立ててくる。片手は先端、もう一方で根元を絞り上げるようにしごき続けるのだ。弱点に集中砲火を浴びせられては、悶えないわけにはいかない、感じないわけにはいかないっではないか!
しかし気をやる前兆が現れ始めると、残酷にも生殺しにされてしまうのだ。
青色吐息の悶絶寸前の様で、速女は心の奥底から叫び声をあげる。
ああ、もう、お願い...一度すっきりイカせて....後生よ!!!
それを心から楽しみながら”速女”は更に非情な宣言を言い放つ。

「ダーメ。抵抗しようとする気力があるうちは、その精力という精力を絞り尽くしてあげるわ。まだまだ一刻(2時間)くらいは、このまま悶えさせてあげるわよ。我慢しすぎて頭がおかしくなれば、そのほうが憑依しやすくなるしね!もっと狂わせてあげるわよ」

そ、そんな....やめてー!
無駄とは知りつつも哀願せずにはいられない。
後一刻なんて到底身体、いや精神が持たないわ....
そんな悲痛な叫びも、反映されることもなく消えていく。

再び夜の闇がすっかり辺りを覆っている。
速女は昨夜から休むこともできずに丸一日以上責めつづけられている。しかもその全てが執拗なくらい終始一貫した焦らし責めなのだ。驚くべきことに、あまりにも長い幻老斎の責めの最中、まだ一度も絶頂に達することを許されてないのだった。常人ではとっくに気が狂っている責め苦。これはくノ一とても同様であろう。いくら並外れた精神力を持つ彼女達でも、女の本質的な弱さを的確に突いてくる責めの前には屈しないわけがない。いかに平静を保とうとしても、それを突き破るような動物的な欲求、生理的な欲求がほとばしるように噴出してきては、速女に襲いかかるのだ。
肉体の鎧が剥ぎ取られた今、彼女はそれを精神力だけで、凌がねばならない。そう、己の精神力だけで。そして”幻老斎”はその精神さえも揺さぶらんとする苦しみを与えてくるのだ。
あまりにも過酷、あまりにも非情。
しかしまだまだ、飽き足らないといわんばかりに、むごいまでの女の生殺しの責め苦は続いていくのである。

それから実際に一刻の時がたった。
この時間は速女にとっては、つらく苦しく、そしてあまりにも耐え忍ぶには長過ぎる時間だった。
先ほど既に限界を迎えていた忍耐力も決壊し、後は脳髄をじりじり焼け焦がすくらいの獣欲がくすぶりつづけるのである。満たされない事で蓄積されつづけたフラストレーションは、速女の気丈な心の柱をも根元からぐらつかせるのだ。

どうしてここまで苦しめるのよ、ねぇ、もういいでしょう..あああ、もう、もう堪忍してよ....たまらない、たまんないのよー!
遂にはその言葉の端々に泣きごとめいた混ざり始める。
猛烈な眠気と疲労が渦巻く中、飽くなきまでに色責めを仕掛けられた結果、もはや速女は夢見心地に快楽だけを感じ取る人形といってもいい存在に堕ちていた。もう何も考えられない。ひたすら官能をむさぼり、そして、一度でいい、たった一度でいいから絶頂に達することを渇望する性の奴隷になり下がっていたのだ....

気が済んだでしょ、ここまでして..あぅぅぅぅ、イカせて、あああ、イカせてよー、お願い、お願いだからぁ!

しかし、またしても絶頂の一歩手前で寸止めされ、火照りきった肉体を強制的に静められていくのだ。それは、パンパンに張り詰めた風船からほんの少しずつ空気を抜いていくのに似ている。そうしておいてから、再び破裂寸前まで空気を入れるのである。しかし決して暴発はさせない。肉体をのっとった”速女”故にイク寸前でいかせないという制御は完璧だった。

ああ、また、どうして最後までしてくれないの。あたしを本当に狂わすつもり?ねぇ、お願い、最後まで、最後までしてー!
なりふりかまわず速女は心の中で叫びたてるのだった。もうこの身がどうなってもいい。とにかく一度すっきりしたかったのだ。

「あーら、いい具合に練りあがってきたわね。さすがのくノ一様も形無しってとこかしら。まあしょうがないわね。女にとって生殺しってのは、一番むごい拷問ですものね。理性を効かそうとしても、耐えきれるものでは決してないわよ。まあ、あなたがそこまで言うのなら、一度くらいはイカせてあげないこともないけどー」
ゴシュゴシュと陰棒責めをしながらも台詞を続ける。

ひぎぃぃ..ええ、は、早くイカせて!!ねぇ、早くぅ!!!

「うふふ、でも気持ちいいこと以外に何も考えられないって、女にとって何よりの幸せじゃないかしら。速女ちゃん、あなたもそう思わない、ねぇ?」

ああああ...そ、そんなこと...あるわけない、思わない、思わないわよ!! そ、それより早くぅ!

「そう、残念ねぇ、じゃあそう思うまで、このまま焦らしつづけてあげるわ。気がふれて、頭の中が呆けきって快楽を求める以外何も考えられない牝に変わるまで、性欲を昂進させてあげるわ」

そ、そんな、これ以上されると壊れるわ...早くカタをつけて、ねぇ、ねぇったら...

そんな胸が裂けるような叫びも、あっさりかき消されてしまう。そうして再び重苦にあえぐ時間が始まるのだ。

ひぃ、ぐく..あひぃ....うぅぅん...あああ、はぐぅ.....
あれから更に半刻の時が経った。女陰棒への執拗な愛撫は続けつつも、絶対に最後まではイカせてくれない責めの前に、さしもの速女の言葉を失い、動物じみたうめきを上げるだけだった。

「もはや、ぐうの音も出ないって感じね。頭の奥まで性欲で痺れきったかしら...うふふ、じゃあ今度こそ本当に最後までしてあげようかしら。ねぇ、ちょっと聞いてる?」

あががが...し、して.....さ、さひごまでぇひてぇ...

官能の泥沼に浸りきった頭では、なかなかうまくしゃべれない。”速女”の狙い通りに、完全に気のふれる一歩手前まで追い込まれていたようだ。しかし、そんなことはどうでもよい...今は、ただ目先の快楽をむさぼるだけで....

「ふふふ、いいわ。じゃあ、今度こそしてあげる。あなたが嫌というほどにね...」
不気味な笑みを浮かべつつ言葉を続ける。そうして女陰棒をゆっくりと握りなおす。

「でもね、最初にあなたに謝っておかなければならないわ。あたしって卑怯よね。大事な事を言ってなかったんですもの...」

ふぐぅ...あ..くひぃ、い、いったいなにをいっているのよ...

「あたしの本当の狙いを。なぜ今まで性感を高めるだけ高めといて、ひたすら焦らしまくってきたのか、その真意を...うふふ、それはね、今の憑依状態ってまだ未完全なのよ。肉体は意のままになるけど、内面を含めた全てを支配しているわけではないわ。憑依が完了し、あたしが速女になるには、あなたが女である弱みをさらけ出したときに付けこむ必要があるのよ。その瞬間にあたしはあなたの精神を永遠に封印し、この素晴らしい身体を完全にあたしのものにすることができるってわけ。女である弱みを曝け出す瞬間...そう、あなたが最後の絶頂を極める瞬間ってことよ!」

そ、そんな....

「イッた時があなたの最期ってわけ。つまりあなたはもうイケないってことなのよ。万が一、いえ、億万が一でも逆転に望みを繋ぎたいのならね...」

な、なんてことなの....こんな状態で抵抗も出来ないまま、ひたすら快楽を耐えなければいけないというの?そんなこと、あんまりだわ..
しかし冷静さを取り戻すには身体は火照りすぎており、頭の中も快楽に痺れたままであり、それが静まる気配など到底無いのだ。
少しでも平静さを取り戻し、体勢を整えた上で、防御を固めようと試みるが、性感が壊れたようになっている身体のみならず、心もどこか呆然となったままで言う事をまるで聞かない。
な、なんで...あああ...
気ばかり焦るがどうしようもない。

「少しは堪えたのかしら?ちょぴり正気に戻ったようね。でも無駄よ。これまでの責めは何もあなたの身体を狂わせてきただけではないのよ。気付かないくらいの速度で、ゆっくりじわじわと、頑なな心のねじまで緩めてきたのよ。何度も何度も『イキたい!!』って渇望させることで、頭の隅にまでその台詞を刻み込んだの。刷り込んだのよ、どうしようもないくらいにね。つまり今のあなたはいくら冷静になろうとしても、心の奥からあげられる肉の欲求を打ち消す事はできないのよ。絶えず淫欲を求める異常性欲者ってわけ....どう、うれしい?」

異常性欲...そんなことあるわけない!!!
そんな戯言は軽く一蹴すればいいはずのことだ。しかし、それが出来ないのはなぜ? 肉体のうずき以外に沸きあがってくるような止めど無い欲求は...本当に、これが.....

「もちろん、身体もボロボロに壊れてるからねぇ。十数える間、持てばいいほうじゃないかしら。でも残念なことに時間は無限にあるのよ。うふふ、どう考えても無理だと思うけど、せいぜい頑張って見ることね...そう...」
速女の苦悩を見透かすような声でしゃべる。

「だって今のあなたには、もはやそれしかできることがないんですもの。歯を食いしばって耐えることしかね!」

ああ、あたしは負けないわ...そんな簡単にあなたに屈するような真似はしないぃ...うくくぅ...そうよ、あなたに身体を明渡したりするものですか...はぐぅぅ、卑劣な者の前に屈する等、里の者として、絶対に許されない!!

「あはははは、まだプライドなんて、なんの役にも立たないものを後生大事に持っているの?どうしようもないわねえ。少しは自分の立場ってものを考えなさいよ。崩壊寸前の身体を嬲られてイカないわけないじゃないの。ましてや、こーんなものまで付けただらしない身体でどうやって立ち向かうというの?」

速女の端麗な手が、その部分だけグロテスクに歪む女陰棒をゆっくりと持ち上げる。そして勃起した先端から根元まで、ずぼっと一気にしごき落とす。

あがぁ!!ぐひぃぃぃ!!!た、助けて!!!

「ふん、口では偉そうなことを言っても身体はとっくに壊れてるじゃない。ついさっきまでの焦らし責めでもヒーヒー言ってたくせに理性効かそうとしても無駄なのよ」

ああ、こんな事って...
速女は悔しかった。自分は本来こんなに淫らな女では決してなかったはずだ。しかし一昼夜にわたる生殺し責めと強力な催淫剤で身体中に潜む性感という性感を完全に剥き出しにされ、更には秘術を用いたことにより肉欲への耐性がほとんどなくなってしまった...それに加え、性欲を常に求めてしまうように洗脳までされているとは...。しかし、ここであきらめることはできなかった。あきらめたらそこで終わりなのだ。勝負は速女の負けとなる。こんな無様な最期があるだろうか?いやよ、そんなのはいや!!
悲壮なまでの決意を新たにするしかなかった。

あたしは、どんなことをされても、お前の前で絶対にイクもんですか!

しかし、それはたった一度でもいいから悶々と身体中にうずまく肉の悦びを吐き出したい、今までの焦らし責めの後で一度すっきりとイキたい!と渇望する速女にとって死ぬほどつらい、まさに血を吐くような誓いだった。

「あらー、まだそんなこと考えてるのね。まあ、いいわ...じゃあ、このままイカせてあげるのは簡単だけど、強情なあなたにとっておきの舞台へ案内してあげるから...この世では味わえない最高の快楽が待っている場所へ...楽しみねえ、あなたがどこまで気丈な態度を保ってられるのか...」

そういうと、”速女”は立ち上がり、ふらつきながらも暗闇の中へ吸い込まれていくのだった。

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