「あぐぅ..う、動かない、身体が動かないのよ...」
床に伏せったまま、速女はなんとか立ちあがろうとする。しかし双方の腕には全く力が入らない。両脚も同様である。かろうじて首から上を揺すぶったり、指先をひくつかせることくらいは出来るが、それ以上の事は、いくら足掻いても無理だった。這いずることすらままない。
芋虫のように醜く転がされた速女。いや、芋虫でも地べたを這い回ることくらいはできる。今の速女にはそれすらもできないのだ。芋虫以下の存在...肉達磨だ。
「熱い...熱いわ...」
それに先ほどからの灼熱の性欲のたぎり。皮一枚隔てた下では情欲の炎がふつふつと煮えたぎっていることだろう。”速女”の企みにより鋭敏にされた性感は、新たに吸いこんだ催淫ガスに忠実すぎる反応を見せ始める。股間の茂みの下の秘裂からは、ほとばしるように淫水がドクドクと吐き出され、それにまみれた女陰棒も怪しい光沢にギラつき、天を突かんばかりである。
そんな速女に狙いをつけた数本の触手が、早くも回りからじわじわと忍び寄り始める。
ずりゅぅぅ...くぴゅ、ずりずりぃ..
あの不快な音を響かせながら、美しき獲物に迫り来るのだ。
赤黒く不気味に艶めく触手。太さは収縮運動をしているので変化を見せるが、平均すれば1寸くらいだろうか。じっとりとぬめつく皮膚からは湯気のようなものが立っているのが見えるが、これが催淫効果を持つ瘴気の正体なのかもしれない。
女の蜜の匂いに早くも反応を見せたという事か。しかし何本かの触手が無骨な蠕動運動をしながらゆっくりと床を這って近づいてくるだけなのは、まずは様子見ということだろう。危険の有無を探る斥候の役目を果たしているのかもしれない。
・・・ほらぁ、触手が迫ってきてるわよ。なんとかしないと、捕まっちゃうわよ。うふふ。触手の先にもたっぷり体液がついてるから、ね、ギトギトに光っているでしょ? あれに触られたら大変よぉ。あははは、今度は生身のあなたの苦しむさまをとっくりと見せてもらうからね・・・
一反肉体を明渡した”速女”は再び頭の中に響くような話し方を始める。
肉体を開放したといっても、もちろん永続的なものではない。
支配権は、あくまで”速女”にあるのだ。いつ何時気が変わって、再び肉体を占領する事も容易なのである。
これだけ責めつづけても、あきらめることなく、心の奥で憤死寸前になりながらもなお抵抗をみせる速女の気高さ。そういったものを見ると、たまらなく虐めたくなるのである。いったいどこまで気が狂わずに耐える事ができるのか....速女は簡単には壊れない最高の玩具。一つの責めに耐えられたとしても、喜んで一層過酷な試練を加えるだけ。そうして限りなく臨界点へと追い詰めていくのだ。
だが、この速女という女子(おなご)、全く稀有な粘り強さを持っておるのぉ...
”速女”はふと、以前の老人口調に戻って思索する。
責めに対して打てば響くような反応を見せる極上の素材。女としての”性能”も最高級である。それでいて最後の一線は決して超えようとはしない強靭な精神力。並の女子ならとっくに気をやり、果てていることだろう。
幾らでも責めたくなるようなたまらん獲物じゃわい....ふははは、もっと、もっとと身体は求めて泣いておるではないか、ぐひひひ、よかろう、お前を責め殺してやるわ。この世のものとは思えぬ快楽でな!
すぐさま、”速女”は元の口調で速女に語りかける。
・・・悶えるのもいいけれど、今入ってきた入り口を見て。どう?見える?・・・
なんとか首をよじってその方向に眼を向ける。苦しみに潤む瞳を凝らしじっと見つめるのだ。
確かに先ほど開いた壁がそのままに見える。
いや、そうではない。少し、少しずつ狭まっているではないか!
・・・どうやら、気づいたようね。この巣窟、あそこが唯一の入り口でもあり、出口でもあるの。お前という獲物を誘い込む事に成功した淫盲虫が、その出入り口を閉ざそうとしているわ。あそこが塞がれたらあなたに逃げ場所はもうないのよ。ここで淫盲虫と仲良く暮らす他ないわね。クスッ、それもとっても楽しいかもしれなくてよ、面倒な事を考える事もなくひたすら快楽のみをむさぼる生活。腰が抜けるくらいに素敵ね! アハハ・・・
「そ、そんな...」
非情な宣告に戸惑っている暇は無い。気が焦る速女は再び身体に渾身の力を込めようとする。しかしまるで手応えがないのだ!穴の開いた風船に空気を詰めようとするかのような作業の繰り返し。
「は、早くしないと..ぐふっ、た、退路が!」
燃え滾る肉体を持て余しながらも、なんとか体勢を立て直そうと努力してみる。そうしている間にも触手は速女めがけて迫っており、扉は徐々に締まっていくのだ。逃げるにせよ、戦うにせよ、床に転がったままではどうしようもないではないか!それがわかっていながら、手足がもがれた肉人形のように何もできずにじっとしていなければならないのか?
ずりゅぅ、ぐりゅぅ、ズル...ズリィィ....
迫り来る触手は確実に間合いを詰めてくる。速女との距離も、もうそんなに離れてはいない。
「い、いやよ、このまま嬲られてしまうなんて...は、早く、なんとかしないとぉ...お願い動いてぇ!!!」
今一度渾身の力を込めてみる。するとどうしたことだろうか。悲痛な心の叫びに呼応するかのように、わずかだが前に体を這わせることが出来たのだ!
心の恐慌が、体の奥底に秘められた何か神秘的な力を発揮させたのか、それともほんの少しであるが、奪われた体力が回復しつつあるのか...はっきりとしたことはわからない。ただ体を動かすことが出来たのは事実なのだ。それを確かめるように、また半歩体を前に進めてみる。
既に壁は半分以上がしまっている。体がようやく通せるくらいしか残されていないのだ。
しかしその出入り口まではまだ相当の距離が残されている。それをかたつむりが進むような速度で這いずっていては到底間に合いそうにない。
「くふぅ...お、お願い....もっと、もっと早く....」
ズン!!!
突然体が後ろに引っ張られるような軽い衝撃があった。
な、何?
見ると片方の足首に、触手が絡みついているのだ。一度捕えた獲物は決して離そうとはしない力強さで、本体のほうに引き寄せようとグイグイ引っ張るのだ。
わずかに出口の方に向かっていた体だが、たちまち元の場所に戻され、さらに淫獣のほうへとズルズル後退しはじめる。
ああ、そ、そんなぁぁ!!!
なんとか前進しようとするが、万力にでも挟まれたかのようにビクともしないのだ。それどころか、確実に待ち構える淫盲虫のほうに手繰り寄せられるのである。
まだ捕まれていないほうの脚をばたつかせてみるも、さしたる抵抗にはならない。それもすぐ別の触手に絡み取られてしまう。
グイッ!!
速女を引っ張る強さがより一層力を増す。
唯一の出口は、もうほとんど締りかけている。そしてそこまでは絶望的なまでの距離がある。
死地から脱することの出きる唯一の希望。それが今まさに閉ざされようとしていうのだ。
それでもなお体をくねらせるように最後のあがきを見せる速女に対し、触手の先から悪魔の毒液が分泌されるのだ。ドクリ、ネチョリと垂れ落ちる禁断の体液が、速女のほっそりと引き締まる足首に注がれるのだ。
ベトッ....
白濁した体液の数滴が、付着する。
ひぎぃぃ!!!!!!!
わずかに足首に触れただけで、速女は不自由なはずの体をピーンと仰け反らせて硬直させてしまう。なんという破壊力であろうか...足首がまるで性器のようだ。そこからは、熱く潤みきった膣内を太いものでグチャグチャに掻き回されるような、女の内部から急所をえぐり抜かれるようなそんな耐え難い愉悦が沸きあがってくるのだ。たまらず目の前がチカチカと点滅し、世界が崩れはじめる。
「あ、頭の中が、と、蕩けそうよぉお!!!!イク、イクはぁああぁぁぁああ!!」
たまらず体は淫らに狂い、限界を超えんばかりにうねり舞う。すぐそこに臨界点が見えてくる。
あぐぅぅぅ、い、いけない!!!ひぎぃぃぃ!!!!!
それをまさに紙一重の所で食いとめる。これ以上曲がらないくらいに眉根を八の字に寄せ、涎が垂れ落ちる唇とぎゅっと食いしばり、総身の力を振り絞って己が官能の渦に立ち向かうのである。太股の筋肉が引き攣るくらいに下半身を引き締め、子宮が縮むくらいに力を込める。
まさに、あと一歩で崖から転落するというギリギリの所でなんとか踏みとどまる。が、その分触手に対する抵抗が疎かになり、一気に本体のほうへとたぐり寄せられてしまう。
ずりぃー、ずりぃぃぃー...
まずい!このままでは...かひんっ!!
すぐさま防御の姿勢を取ろうとするが、そうはさせないとばかりに再び強烈な催淫剤を肌にまぶし込まれる。
あ...と、扉が...し、締まって...あぐぅ...しまう!!!
実際の距離はさほど離れてないのかもしれないが、速女には永遠にも感じてしまう。肉体を責めさいなまれながらも、遠くに霞んで見える脱出口をじっと見つめる....
くぅぅ...このままでは...
しかし足掻こうにも、あまりにも強力な催淫効果を持つ体液に邪魔をされ、まともな抵抗が不可能な状態だ。
ガックン!!!
遂には両手首、そして腰回りまでもが触手に束縛されてしまう。
唯一自由を許されたのが首から上という状況で、どう戦えば良いのだ?しかも媚薬に対して抵抗するのに手一杯の状況で。
早く打開策を見つけださねば、と焦る自分と、快楽にこのまま溺れてしまえと叫びたてる自分に挟まれて、冷静に考えることなどできない。そのことが、より一層心を乱していくのだ。
ああ、ひぃ、くふっ....はあ、はあ、はあ、一体どうすればいのよ...ああ、もう扉が...
速女に残された唯一の退路が今、閉ざされようとしている。
わずかに開いていた面が一本の細い線となり、それすらも遂には見えなくなってしまう。一瞬の静寂...
・・・うふふ、せっかく逃げ道を用意してあげてたのに、駄目ねえ。そんな体たらくで本当に一流のくノ一だったわけ?ざまぁないわね・・・ねぇ、最初あたしと戦ったときのような小気味のいい技で、早くこいつを倒しちゃいなさいよ...ふふふ・・・
「そ、そんな....ぁはあ....うぐぅ」
速女の苦戦ぶりをわかっていて、わざとからかうのがなんとも心地よい。
四肢に巻き付いている触手を体力を奪われ切った身体で解こうとしても、到底かなうものではない。一見柔にも見える触手であるが、抜群の伸張性とともに鋼の粘り強さも併せ持っており、例え刀で切ろうにもそう簡単にはできないのである。
ギチギチと手首、足首を締め上げてくる触手。腰骨の上辺りに巻き付いた物の生暖かい感触。それが腹の上を不気味に蠢く。
こ、こいつらをなんとかしなければ....
色欲に明滅するような頭で、速女はなんとか対抗できる手を考えていく。
しかしろくに動けないような身体で何ができるというのか?
多少抵抗したところで触手はびくともしないのだ。その度に深まる無力感。
更に別の触手が現れる。手首、足首に2重、3重に巻き付いていく。そして今まで以上の力強さで本体のほうへ引きずっていくのだ。
首にも絡み付こうとする触手がある。くっきり浮き出た鎖骨をなぞりながらタイミングを見計らっているかのようだ。
「い、いやよ...ああ...ぐふっ!!」
しかし四肢をきっちり拘束された状態で、首を揺すぶったところで抗えるものではない。キュルキュルと絡み付かれ、息苦しささえ覚える。
もはや完全に身体の動きを封じられているのだ。しかも不規則に落とされる魔性の体液に、身体の末端からじわじわと快楽に痺れさせられている。手と足の先はドロドロに蕩けたように感触がない。あるのは性感のみである。
ちょっとでも気を抜けば、果ててしまいそう...しかしそれもどれだけ続けられるか...
また粘液が垂らされる。生身の人間では、10秒も触れていればこれなしでは生きていけなくなるくらいの禁断症状が出る液体...
空気を求める魚のように口をパクパクさせて、喘ぐ速女。絶息寸前の有様である。
その心の隙間に付け入るように”速女”は語り掛ける。
・・・ねぇ、無理せず楽になりなさいよ。あなたが耐えようとする限り、その苦しみは続くのよ。固く閉ざされた心の檻を開放した瞬間に、女として最も幸せな悦びがあなたを包むのよ・・・
「はぁはぁ、ぐ、くぅぅ..でも、でも....」
・・・何もかも忘れていっちゃいなさいよ。本能の赴くままに、自分の淫らな姿を曝け出してしまいなさい・・・
「あぐぅぅぅ....もう、もう....あああ...」
・・・そうよ、そのままいくのよ・・・
一瞬それでもいいかもしれないという邪念が脳裏をよぎる。
「も、もうダメ........ひぐぅぅぅ!」
・・・そうよ、うふふ、あなたが気をやった後は、あたしが思う存分この身体を使ってあげるわよ・・・
その言葉が快楽に呆けた速女の理性を揺り戻す。
そうなのだ。このまま絶頂を迎えたら最後、もう元には戻れない。
「はぐぅぅ、あはぁはぁ、い、いけない、くひぃん!! ..で、でもイケないのよ...イッテはダメ...あ、あなたにこの身体は、渡せない...うぐごぉわぁ!」
・・・これでも、まだあたしを倒すつもり?・・・・・
「え、ええ、た、倒す...倒してみせるわぁ...ああああぁ」
朦朧とした意識の中で、呪文を唱えるようにして、打倒”速女”を繰り返す。
・・・自由を封じられた上に肉欲に喘ぎ狂うこの身体で? 情欲に半分支配され、まともな思考力を奪われたような頭で?・・・
「あああ、お、おあいにくさま...あ、あたしは、そ、そう簡単には屈しないわよ...」
精一杯の虚勢を張ってみせる。快楽に耐えるのが精々の状態で何ができよう。
・・・あら、そう? 人がせっかく優しくしてあげてるのに、まだそんな生意気な口を聞くのね。まあいいわ。そんな態度をいつまで取れるのか、じっくりと眺めさせてもらうから。せいぜい頑張りなさいね、くふふ・・・
遂には淫盲虫の前に引きずり出される。
久しぶりの極上の生贄を前にして、淫獣も身体を打ち震わせて興奮している。
体から突き出た無数の触手。先ほどまでのとは違い、やや太めで、どことなくゴツゴツしている。良く見ると表面には無数の疣がついており、そこから白濁した例の体液をジュクジュクと絶えず吐き出しているのだ。
今はじっと責められるのを待つかのように、緊縛された身を横たえる速女。
そこを触手が淫らにうねり狂いながら、一斉に襲いかかる時をうかがっている。