十六夜残月抄・崩壊編
15話 邀撃戦

こんな凛とした美少女を徹底的に責めさいなんだどうなるか?
幻老斎がまず最初に速女を見たときの事を思い出す。
染み一つ無い白く輝く肌。その肌の木目細やかさ。
細身の体ながら、胸や腰は意外なほど女らしさを滲ませており、そのバランスの危うさがなんともいえず心地よい。
衣服の上からでもわかる、つんと尖った胸元は、己の気の強さをも主張しているようだった。
長くすらりと伸びた指先のたおやかな動き。その全てが計算されつくしたような、しなやかで狡猾な身のこなし。
そして顔。
くっきりとおった鼻梁。瑞々しい口元。それに全てを見通すかのように透き通った瞳。
その瞳は、老人の姿を捉えていたのだろう。やや見下したような冷たい視線でこちらを見つめ返していた。
そこからは負けん気の強さと、自分に対する圧倒的な自信を窺い知ることができたのだ。
まあ、よかろう。そのほうが堕としがいがあるというものじゃ...
逆に舌なめずりしながら、幻老斎は思いつく限りの色責めを、この女体に加えてきたのだ。
昨夜来から延々と一昼夜に渡って責め続けられ疲弊しきった体。
更にそこから余力を一滴残らず搾り取られた肉体は、消耗の限りを尽くしており、これからの責めに耐える力などは微塵も残っていまい。
それなら気力でカバーするしかないのだが、それも怪しいものである。
不眠不休の過酷な色責めによる疲労と眠けは頂点に達し、更には首尾一貫して行われてきた焦らし責めで性欲昂進状態に陥った頭では、日頃の冷静沈着な思考は到底望めないだろう。
しかも度重なる媚薬責めと、この世にあらざる淫獣の体液を浴びた体は、極限まで性感を高められてしまっている。茹だるように火照った体を癒す為なら悪魔に魂すら売りかねない。
術による肉体変化でだらしなく性感帯を剥き出しにした体は、先ほど更に性感を倍にされ、触れればたちまち崩れるようなもろさを露呈している。
そして肉体内に同居し、内部から速女の精神を崩壊すべくネチネチ追い詰める幻老斎の精神。
四肢の自由も触手で完全に封じられた今となっては、これら数々の猛攻を己が精神力で耐えぬくしか無いのだ。しかし弱点ばかりに集中砲火を浴び続けて、いつまで快楽の極みを尽くさぬように耐えきれるというのか? イケば最期という速女の存在自体が、もはや風前の灯火といってよいのではないか?

目の前にだらしなく転がる肉塊。
これがあの美少女のなれの果てだというのか...
湯気が立つほどに上気した肌は桜色に染まり、荒荒しい吐息と共に、だらしなく緩みきった穴という穴から汁を垂れ流す..そのどこにかつての美少女の面影が残されているというのか?
しかし、先ほどの物言いと言い、瞳の奥にかすかに秘めた光を見れば、心の奥底まで曝け出して屈したわけではないようである。
今改めて考える。気鋭の美少女を徹底的に責めさいなんだどうなるか?
ようやく御膳立てが整ったのだ。これまでは前座のようなもの。答えは今から出るのだ。いよいよこの不撓不屈の精神を崩壊させるべく、最後の責めが始まる。

ふしゅーぷしゅー・・・
まるで息遣いをするような音を立てて宙を舞う触手の群れ。そこから噴出される濃瘴気のせいか、陽炎が立っているようにすら見える。びっしりと表面を多う疣からとろとろと滴り落ちるこってりした体液。その乳状の液体には女を狂わせる濃密な成分がいやというほど含まれているのだ。尽きることのない粘液は、表面をつたい、床一面をしとどに濡らしている...
生きながらにして魔界に落ちてしまった時にしか見れぬような、とても現し世のものとは思えぬ光景。

あはあぁああ...このままでは...お、堕ちちゃう...

速女は悩乱の果てにあった。体をよじろうにも、体に幾重にも巻きついた触手は決してそれを許さない。縄と違って弾力があり、伸ばせば隙間ができるようにも思えるが、それ自体が生きており、獲物を逃すまいと意思を持って締め上げてくるため、その圧迫感は逆に縄よりもきついのだ。そんな”生きた縄”に緊縛された裸身を喘がせてみたところで、反撃する事など到底敵わない。猫が鼠にするように、いいように弄ばれるだけである。

あぐぅあああ...で、でもぉ...う、動けなひぃぃぃ...こ、これじゃ、負けてしまう...

なんとか拘束を解こうともがく速女。しかし緩むどころが、縛めの触手の数は増える一方である。しかも、あの忌まわしい体液を塗りつけようと数え切れないまでの触手が待ち構えているのである。あれだけの体液を塗りたくられてはとても正気を保つ自信は無い...
ああ、く、くやしい...で、でも...ああ...

醜悪にくねる触手が身動きの取れない速女に群がっていく。先ほどまで彼女をいたぶっていた触手が斥候を主に担当するとすれば、太めで疣のついた今度の触手は明らかに戦闘用といえる。女を快楽に狂わせ、前後不覚にまで追いこみ、そのあふれ出る女の恥蜜を搾り取るための...

ぐじゅぅぅ....
たっぷりとその体液を体の奥まで擦り込むように数本の触手が体に触れる。

「!!!!!はがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

一瞬気が遠くなる。言葉も出ない。表せない。世界の果ての愉悦が全官能を根底から揺るがしてゆく感覚。道義や貞操といった人として生きていく上で守るべきものすら意味をなさないくらい徹底した破壊行為。目くるめく官能の泥沼にどっぷりとはまり込んでしまう...
しかもそれは一度きりではない。少しの間を置いて後から後から新たな触手がその体液を擦り付け、体を嘗め回していくのだ。体中の到るところで忌まわしき触手が這いずりまわり、白濁した液汁で速女の体中をべといべとに汚し抜いて行くのだ。

「ひぎぃぃぃぃぃぃ!!!!」

首をのけぞらし、顎を突き出し、歯を食いしばって耐える速女。全身の筋肉を鋼のように伸ばしきり、足の指先もこれ以上無理というところまで広げきる。体は硬直したかのように身じろぎ一つできない。
それでも、そこまでしても肉体の暴走は止められない。今までとはケタ違いの快感が体を駆け抜けていくのだ。そして底無しに沸きあがる絶頂への衝動。体も心も何から何まで全てを持っていかれるように、加速度を付けながら最後の悦楽の境地へと押し上げられていく....

ぎりっ!
渾身の力を込めて、それに対抗する。噛み締める唇が痛い...体はこれ以上無理というぐらいに弓なりにそらす。だめぇぇぇ...イケなひぃぃ...

しかし触手の責めは執拗で、疲れというものをしらないのが悔しいところである。時間差を置いて絶える事無く悪魔の体液を塗りつけ、体の隅々まで嬲り尽くしていくのだ。その数20本、いや30本以上はあるだろうか。しかも皮膚に触れた時の感触の、なんともおぞましいことといったら!
さわさわと撫でるだけではなく、表面に無数についた疣状の突起のそれぞれが女の柔肌にねっとりと吸いついていくのだ。そしてそれが離れていく時のどうしようも無いほどの淫靡な感触。しかも1箇所や2箇所ではない。体中到るところで同時に、そして決してその動きを予測させない身勝手さで、ありとあらゆる女の急所を責めたてていくのである。
耳の裏の敏感な部分を執拗に愛撫するもの。
顎の下をじっくりと撫で上げていくもの。
鎖骨の上の窪んだところをネチネチと撫で回すもの。
腋の下の弱い部分を、延々と擽り続けるもの。
苦しげに膨らんだ乳房の麓をみっちりと揉みあげるもの。
脇腹や臍といった部分にも飽くなき責めの手を這わせるもの。
突っ張った筋肉の感触を楽しむかのように太股を丹念に撫でさするもの。
更にはその付け根の微妙な部分を、入念に触れるもの。
両脚のふくらはぎに巻き付き、くどいくらい貪欲にその弾力を味わい尽くそうとするもの。
足の裏にまでべっとり張りつき、絶え難いようなくすぐったさを与えていくもの。
その他女体に眠る一つの性感帯も見過ごすまいと執念深く体をまさぐる触手、触手、触手....
凄まじい催淫効果を持つ体液を念入りに塗りたくられた上に、感受帯を一つ一つ丁寧に掘り起こされていくのである。
なんという愉悦。凄惨なまでの色地獄に速女はのた打ち回るのである。

ああ、ダメダメダメっ!!でも、これをどうやって防げばいいのよ...くはぁ!!

夢現の境をさ迷いながら、躍起となって考える。しかし、防御策などあろうはずがない。
そうするうちにも確実に最後の瞬間は近づいてくるのだ。九合目半を超え、後幾ばくも待たずして達するという瞬間、
も、もう体が持たないぃ...うぐぐぅ、こ、こうなれば...

ぐりっ!
速女は食いしめていた唇を思いっきり噛んだ。つーっと鮮血がそこから垂れ落ちる。
その痛みがわずかに残った理性を呼び戻す。ギリギリの崖っぷちで踏み止まる速女。
な、なんとか間にあった...?
しかし油断は出来ない。その間も体中を這いまわる触手からは、ずきずきと体の芯に響くような鋭い官能が波状的に与えられているのである。
しかし、その目先の官能に対処するのが精一杯の速女は、一つ重要な事に気付いていなかったのである。そう、それは...

・・・あらぁ、しぶといわねぇ。もう、イッちゃいなさいよぉー。でも安心するのはまだ早くてよ。触手の動きをよく見てごらんなさい。体中から沸き上がる夥しい官能に埋没しているあなたは何か勘違いしているかもしれないけど、まだ大事な部分にはちっとも手をつけていないのよ。ほらー、しこりきった乳首といい、とろとろに濡れそぼる陰(ほと)といい、かすかに息づくお尻の穴といい、それに...猛々しく隆起した女陰の棒までもね!うふふ、あはははは、体を少し撫でられただけでそんな無我夢中な癖に、これからそんなところをいやというほど責めたてられたら、果たしてどうなるのかしら...?
これからあなたの本当の急所をこってりと可愛がってあげるから...ぴゅーと潮を噴いてだらしなく果ててしまうのよ。そして体をあたしに明渡すのよぉ。うふふ、あはは!!・・・

「あぐぅ...そんな...ひぃぃ...」

その事実を付きつけられて速女は愕然とした。確かに淫獣の嫌悪すべき触手は体中を埋め尽すように這いずりまわっているが、まだ肝心な箇所にはその責め手を一つたりとも進めてなかったのである。幻老斎により呼び出されし異形の化け物は、その主人の命は絶対であり、その心の動きを読みとって動いている。主人の残忍さそのままに陰獣も陰険さを遺憾無く発揮しているのであった。その忠実な僕に”速女”は新たなる命を下す。
もはや遠慮は要らない。あらん限りの力もって、陵辱の限りを尽くすように...

・・・さぁ、淫盲虫よ!この美しくも淫らな極上の獲物に骨の髄までお前の恐ろしさを教えてあげなさい!!・・・

すぐさまはちきれんばかりにパンパンに膨らんだ乳房に新たな10本以上もの触手が猛然と襲いかかるのだった。

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